November 9, 2011

第73回 サラウンド寺子屋 in 名古屋 Part.2 サラウンド番組のデモと解説

By.Mick Sawaguchi サラウンド寺子屋塾 主宰


日時:2011年8月22日
場所:東海サウンド本社
講師:池田勇人(ハイポジション音声)
   遠山 寛(岐阜放送)
   宮下弘靖(NHK名古屋)
   日比野正吾(CTV MID ENJIN)
テーマ:名古屋制作 サラウンド番組のデモと解説
幹事:安藤正道(CTV MID ENJIN)澤田弘基(東海サウンド)USTREAM SRSサラウンド配信のみなさん




沢口:2011年8月のサラウンド寺子屋は、名古屋勢の最新サラウンド制作の報告となりました.今回の企画とお世話役は、名古屋音の会の安藤さんと澤田さんに大変ご尽力いただき感謝いたします。またSRSエンコードでのLIVE U-STREAM配信というすばらしい企画も実現し、名古屋のみなさんの意気込みと熱気の感じる寺子屋となりました。

寺子屋塾は73回ともなると関東近辺では、ほぼやりつくしたというぐらいやりましたので、私は、関東以外の所で広めていきたいなと考えています。実は春に札幌でやろうと企画していたんですが、ちょうど東北の大地震がおきましたので札幌は延期しました。今回名古屋で「安藤」さんが、こうして機会を作っていただきました。


ほんとにありがとうございます。(一同拍手)

安藤:どうもありがとうございました。この寺子屋塾開催にあたって、会場を提供していただきました東海サウンドの梶野さんにもお礼申し上げます。今、東海サウンドの梶野さんが見えましたので一言。(一同拍手)


梶野: 東海サウンドの梶野と申します。今回この機会をいただきすごく光栄です。「安藤」さんとはこじんまりとやれればとお話をさせていただいたんですけども、中部圏にも同じ業界の皆様方がこれだけいらっしゃるという、身近に感じて非常に光栄でございます。本日は限られた時間かもしれませんが、沢口さんがこちらにいらっしゃっているということで、ホットな情報ですとか、発展的なお話ができればと思います。ありがとうございました。(一同拍手)

安藤:ありがとうございました。それでは早速ですが、岐阜放送さんの高校サッカー選手権岐阜県大会の決勝戦を説明していただきたいと思います。岐阜放送さんお願いします。制作を担当したハイポジションのミキサー池田さんからお願いします。

池田:はじめまして。岐阜にありますプロダクションでハイポジションの池田と申します。今回は、岐阜放送さんのサラウンドミックスをさせていただける機会をいただきまして、岐阜放送の遠山さんにはたいへん感謝しております。昨年の2010年11月13日に岐阜の長良川球技メドウ競技場で行いました、岐阜県高校サッカー選手権大会の決勝を岐阜放送さんが初めてサラウンドミックスを行うということで、こういう機会をいただきましたので少しお話をさせていただいて、そのときの収録素材を後ほどお聴きしていただこうかと思っております。ではデモを聴いていただく前に簡単ですけども、今回の中身について説明させていただきます。


今回サラウンドを収録するにあたって、サラウンド環境がございませんでしたので、無理を言いましてYAMAHAさんから機材提供をしていただき、サラウンドの環境の構築までご面倒をみていただきましてありがとうございました。また以前に、音ヤの会で議題としてありましたサラウンドのモニタリング環境の構築をたいへん参考にさせていただきまして、また中京テレビさんがサラウンド中継を初めて行ったときに、仮設でトラックにサラウンドミックス環境を構築したとお伺いしておりましたので、それらもたいへん参考にさせていただきました。


今回、当日仕込の数日前にですね、サラウンドモニタリング環境を事前に構築いたしました。狭い環境ですが、リアにディレイを入れたり、ベースマネージメントを行って整えました。このように、2tトラックの中のコンテナ部分に構築しました。


こちらがフィールド全体の集音用マイクアレンジなんですけども、各マイクの横にサラウンドサークルがありまして、その中の赤い丸っていうのがサラウンドのパンニングを表しております。本来はフィールド手前の客席にオーディエンス用のマイクを立てLSとRSにパンニングしたかったんですけども、素材が高校サッカーっていうのもありまして、予想以上の観客数がいなかったので、どうしようかと思いましたのが、向かい側に各学校の応援団席がありまして、そこにオーディエンスマイクを立てその応援団席のオーディエンスマイクをLSとRSに持ってきました。
これらをふまえて3分程度ですけれども編集いたしました素材がありますのでお聴きください。 NUENDOベースで今回再生させていただこうと思っております。

[ 視聴 ]

ありがとうございました。(一同拍手)今回、サラウンドミックスをさせていただきましての感想なんですけれども、個人的にスポーツ中継の実況解説といいますのは会場が盛り上がってもしっかりと聴こえていたいです。普段ミックスしておりますサッカーでJ2の試合、FC岐阜の2chステレオ放送の場合ですと、フィールドノイズと実況解説のそれぞれ、マスキングしている周波数帯をイコライジングしたり、またはパンニングしたり、後はフィールドノイズにわからない程度ですがうっすらだけルーム系のリバーブを乗せて、フィールドノイズと実況解説の前後感を作って聴きやすくしたりしております。しかし、サラウンドではセンタースピーカーが実況解説のみで使用できましたので、実況解説の抜けがよくフィールドノイズに余計なイコライジングをしたりすることなくミックスできました。

原音をそのまま出力できるというのは、なるほど、サラウンドでのアドバンテージなのかなと思いました。とにかくミックスをしていて物凄く楽しいのと、また色々なミックスアプローチの可能性があるなというのを思いました。前回の名古屋芸術大学での音ヤの会で冨田 勲先生の講義がありましたけれども、サラウンドの普及がいまひとつなのを嘆いていらっしゃいました。それで、日本のテレビや音楽には魅力的なサラウンドコンテンツがたくさんあるのに、それが日本の住宅事情だったりコストの問題だったり色々あるみたいですが、これらを打破する商品がなんとYAMAHAさんから9月に、フロントサラウンドシステムの型番YAS‐101、予想実売価格26000円前後で(一同笑い)発売されます。なんとワンボディで7.1chのバーチャルサラウンドを実現する2.1chスピーカーシステムです。YAMAHAさんの回し者じゃないので。(一同笑い)これらの普及が日本のサラウンド事情を変えるきっかけになると思いますので、YAMAHAさんには頑張っていただきたいのと、私たちもサラウンドの普及に努めるのが宿命だと思って、個人的に小遣いが貯まったらぜひこの商品を買おうと思っております(一同笑い)ご清聴ありがとうございました。(一同拍手)

Q:うちもサッカーをサラウンドでやっておりまして、なかなかお客さんがいない中でサラウンド感を出すにはどうしたらいいかっていうところで、うちも実はフィールドのマイクはサラウンドでやっているんですよ。そこで色々経験的な問題がありまして、まず各マイクの距離が広いので位相差、まあディレイが結構大変なので、特に鳴り物なんかになりますとタイミングが合わないのですごく大変だと思うんです。その辺りの対策を教えていただきたいのですが。
A:結果的にという部分が大きいです。今回は初めてだったというのもあるのでなるべく自分でコントロール可能な範囲でサラウンドミックスをしようと思いまして。なので、少しだけフェーダーのつき上げつき下げっていうのをやっているんです。それをもう少し映像にシンクしたフェーダーワークを今後相談してやっていきたいなと。その機会が岐阜放送さん。サラウンドコンテンツがやっていただくのが大前提ですので、この場をお借りして岐阜放送さんにはよろしくお願いしたいと思います。(一同笑い)

Q:マイクを増やせば増やすほど、サラウンドの音場作ったら手がつけられないというかいじれなくなるんですよね。上げると変わってしまうので。なので、そこって良い面と悪い面とあるので難しいかなと思うので、ぜひ次回はその辺をクリアしていただければ。
A:逆に今後参考にさせてください。

Q:これは、どういうきっかけでやろうと思ったのでしょうか?きっかけは大事だと思うので、その辺のお話をお聴きしたいです。
A:それは、岐阜放送の遠山さんに答えていただこうと思います。

遠山:岐阜放送の遠山です。きっかけはですね、うちも積極的にやりたいという気持ちはあったんですが、なかなか機材面、お金の面的に厳しかったので、実を言いますとこの次の日にFC岐阜のサッカー中継がありまして、ほとんど同じスタッフでやりますと、機材もほとんど一緒だということがありまして、 ハイポジションさんにもお願いしまして、機材同じなので安くしてくださいよ。(一同笑い)そこからまず入りました。それで、じゃあやってみようかという話になりまして、そこから機材なり5.1chのサラウンドの勉強なりっていうのを急遽始めまして。それで、どういう風にマイクをアレンジすれば良いのかということで始めていきました。うちもそんなに機材が豊富ではありませんし、先ほどお話に出たようにマイクを多くすればするほど難しくなるっていうのもよくわかっていましたので、できるだけ少ない本数、いつも使っているマイク+何本かでなんとかできないかということを考えました。人もたくさんいないので、ミキシングも大変になってくると、そういうことも考えまして。実を言うとこのミキサー以外に中継者の中にアナログ用のステレオミックスしている者もおりました。その者に実況解説のミキシングをしっかりやってもらいまして、その実況解説のミキシングの音を、実況ミックスマイクというのに返しています。少しでもシンプルに。良い放送ができるようにということを池田さんとも何度か話させていただいてこういう風になりました。きっかけ的には場所も一緒だったというのもありますし、機材も一緒ですし、スタッフも一緒だというところでやってみようという話になりました。

Q:放送が終わった後に局内で関係者と視聴会とかはやられましたか?そのときの反応などがあればお聞かせいただきたいと思います。
A:すみません、先ほどこれは収録だと言ったんですが生放送でやっております。それなので、生放送中にマスターにいっぱい集まっていたみたいです。うちの技術の部長から局長などがマスターに集合しました。マスターに5.1chの環境を作っておりましてので、そこで聴いていただきました。後でこれを確認したというのは僕と池田で。本番中も聴いていたんですが、その後も聴いてみましたというのはあるんですけど。その感想としては良かったんじゃないかというのがほとんどで、すごく広がりがあって実況解説もクリアに聴こえてきて、やってよかったんじゃないかという反応はありました。編成たちの皆さんにも聴いてもらって、面白いというか、音的に発展したやりかたでやれてよかったんじゃないかという反応はあったんですけど。どこが悪いかとかというのは特に無かったんですが、うちの上の者が言うには少し、バランス的なところはよかったんだけど、ここをもう少しというのは後ろの音が強すぎたとか、ノイズがもう少しあった方がいいんじゃないかという、そういう反応はあったんですが、良かったという反応が多かったです。

安藤:前回の音ヤの会で建築音響の基礎というのをやったときに、一番熱心に聞かれていたのが池田さんなんですね。なのですごいサラウンドに対する熱い思いというのをすごく感じまして。それで作ったということを聞いたので、やってくださいとこちらからお願いしたんです。最初ということもあるので、ぜひ今後、自分も含めてなんですけれども色々な作品を聴いて次につなげてほしいと思います。岐阜放送の池田さんでした。ありがとうございました。(一同拍手)

安藤:逆に、皆さんに聞いてみたい事はありますか。
池田:サラウンドミックスをするにあたり、一番気をつけていらっしゃる事はありますか?メーテレの中瀬さんいかがですか?


中瀬:突然ご指名頂きまして。ええと、僕もそんなに数をやっていないのですけれど、ダウンミックスした時に変な風にサラウンドの音を作るとシュワシュワシュワみたいな音がするので、なんて言うのですかね、前の音と後ろの音を作る時に、例えば二本のマイクから、こう無理に後ろの音を作ったり、位相で作ったりするとダウンミックスかけた時にシュワシュワいう事があります。で、サラウンドだけ聴いている場合には全然気づかないんですけれど、家帰ってみたら何かシュワシュワいってた事があったりするので、技術的には位相操作で後ろの音を作り出さない方が良いかなという気がします。

安藤:はい、ありがとうございました。岐阜放送さんもYAMAHAさんから機材を借りて全面的にやられたといいますが、私もですね、サッカーのサラウンドをやった時は、全面的にYAMAHAさんに協力して頂きましたので、これは感謝するしかないですね。あとは塾長のやっておられる寺子屋塾に、数多く参加して欲しいって僕は思いますかね。(笑い)

安藤:次は、NHK名古屋放送局、大相撲名古屋場所サラウンド制作で、発表は宮下さんです。

宮下:皆さんこんばんは。NHK名古屋放送局技術部の宮下弘靖と申します。

名古屋では、毎年恒例となっております、大相撲名古屋場所のサラウンド制作をご紹介したいと思います。これは、我々のスキルアップを目的として毎年実施している制作です。まずは後半の取り組み幕内の最後三番位を聴いて頂いて館内の迫力、熱気とか盛り上がりをお楽しみください。


その前にマイク配置を先にご紹介します。正面がこちら。画面を見て下手の方にあります。向こう正面があちら側にあって、東、西という配置になっています。それで館(やかた)が真ん中にありまして、その館を囲むようにして東、西、それぞれ天井から二本ずつマイクを吊るしています。同じように正面側の方にも二本吊るして、東と西の花道通路の上の方ですね。これも同じく天井から二本吊るしております。真ん中の館なんですけれども、ここにL、C、Rと3本ありまして、Sennheiser MKH-816を使っております。土俵のちょうど房(ふさ)の位置なんですけれども、あそこにSennheiser MKH-416を忍ばせています。だいたいSEマイクはこんな感じで立っています。サラウンドマイクは、DPA 5100を、館の丁度真上の位置に上から落ちないように吊るしております。

Q:これは天井に近い状態の場所ですか?
A:そうですね。ブームスタンドの丁度首の部分が、こう出るという長さでやっています。今までDPA 5100というのが名古屋局に無かったものですから、今年からの取り組みです。
先程言った館の中の吊りマイクなのですが、センター寄りに三本あります。その両脇にあるのはですね、PAさんのやつなので、うちのではなく、(Sennheiser MKH-)816がこのようにL、C、Rを録る為に三本吊るしてあります。もう一つ房マイク。赤房と白房の中に(Sennheiser MKH-)416を、丁度こう真下を向く形なんですけれども、そういう感じで仕込んでおります。

名古屋場所はですね、他の場所と違って、ちょっと愛知県体育館の作りが特殊になっていまして、支度部屋が、一カ所しか無いんですよね。なので東の力士が西の方に戻ってくるっていうそういう特殊な形になっていまして、ちょっとそこが名古屋場所の特徴ですね。

[ 視聴 ]

宮下:サラウンドイメージですが、正面、リアの方、Ls、Rsの方は正面のL、Rの40Pを後ろに持っていって、東に吊っている二本の40Pを左に持っていって、西の吊りの方も同じく右に持っていくデザインです。
後は(DPA)5100をその間と言いますか、ブリッジのように持たせるという。で、PAは後ろから聴かせるというサラウンドイメージで創っています。



Q:場内から通路に切り替わった時のカメラマイクへの切り替えはマニュアルですか、タリー連動ですか?
A:タリー連動です。
まずは通路の方はタリー連動で、その通路にある(Sennheiser MKH-)416があるんですけれども、そちらのマイクが活きる。場内の方は逆に手動で上げるという切り替えをやっています。

Q: LFEの使い方っていうのはどのようにされたか、お願いします。
A:LFEは館に吊ってある(Sennheiser MKH-)816のセンターだけを送っています。なので、立ち合いのぶつかりのガツンッっていう、あの音だけを送っているという設計になっています。

安藤:僕は以前相撲を観ていた時にですね、吊ってある(Sennheiser MKH-)816三本で行司の移動がはっきりと判ったんですね。これは面白いなと感じました。

Q:これはサラウンドでミックスしているけれど、本線はステレオで出しているっていう事ですか?
A:はい、そうです。

Q:凄く実況のダイナミックレンジが広いと思うんですけれど、今ハードセンターだったと思うんですけれど、結構ヘッドルームが厳しいんじゃないかと思うんですけれど、その辺っていうのは何か気をつけてらっしゃる事とかありますか?
A:コメントのマスターのフェーダーを作って、そこにNeve 33609を入れて、持ち上げて叩いているっていう感じで負けないようにっていう作りにはにしています。

Q:IS International Soundは卓の中で全部作ってダウンミックスで3、4chに送られていますか?
A:そうですね。

Q:サラウンド的に言えばセンターは、ヘッドルームギリギリで創っている感じですか?
A:コメントマスターにはNEVE33609がかなりガッツリいく様には創っています。

安藤:続きまして、弊社中京テレビの作品なのですが、地球オーケストラという、ついこの間5月1日に放送されました、自然の音を収音してですね、クラシックの曲にその音を乗っけて奏でるハーモニーという事で創りました。

安藤:次のセットチェンジに少し時間が掛りますので、その間に今回 USTREAM サラウンド配信の機材システムをご紹介したいと思います。今回、USTREAM中継の為に、かなりの機材を持ってきて頂きましたので、それを紹介したいと思います。今回本格的にですね、カメラもプロ用機器、それと今回スイッチャーがPanasonicの百何十万する簡易スイッチャーなんですけれども、それを使い、後スーパーも何枚か入れていると思うんですけれども、まあちょっとした簡単な中継の際にはこのような機材で出来てしまうという、ちょっとUSTREAM中継にしては大げさな機材を持ってきて頂いて、こだわりを持って中継させて頂いています。


SRS CSE-06PでサラウンドUstream

では、担当の日比野から紹介させていただきます

日比野:CTV MID ENJINの日比野と申します。「地球オーケストラ 日本の美し音を探す旅」という番組を担当しました。この番組自体が、サラウンド番組で、1時間半の全編ロケの番組です。これは、実は2回目で、1回目は世界各国の音を集めて、ボレロの曲を作るという内容でした。今回は、日本国内で、美しい音を探そうという番組です。

ロケのスケジュールとして、小笠原諸島に9月中旬から2週間、次に知床に2月27日から3月4日までの一週間、次に屋久島に1週間くらい。私自身は、知床と屋久島に行きました。小笠原諸島は、旧、中京ビデオセンターの谷川さんが録音したデーダーを頂いて、最後の音響仕上げまで担当しました。仕上げのスケジュールは、1時間半の尺に対して、撮ってきた絵に、音を貼り付ける作業で約1日半、これは、ぼほ寝る間もなく続けたという感じで、この仕上げの段階で、白素材をもらってから、2日後にMAを完成させるスケジュールでした。

MAは、東京の五反田のイマジカ様で一日ナレーション録り、ミックスがイマジカ赤坂で1日のスケジュールです。この、ナレーション録りの最中に、私が音を仕込みました。実際のロケは、技術としてカメラマンと音声兼VEの2名、ディレクターが一人です。サラウンド収録の機材が、とんでもなく多くなり、一番多くなったときに、トータルで20kgくらいで雪の中を歩いたりして、知床は2月なのですごく寒く、マイナス15度くらいでした。そのサラウンド機材をもって新雪にズボーッとコントのよに、はまり動けなくなりました。(一同笑い)
屋久島は、1ヶ月に35日雨が降ると言われている島で、基本的に登山ロケです。そのとき一度20kgので登ってみたんですが、到底登れる重さではないので、最終的には13kgくらいの重さにしました。オープニング前をご覧ください。

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知床はでは、いろんな動物がいて、エゾシカ、鷹、フクロウの音も狙え、まさにフィールドレコーディングです。それをお聞き下さい。

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知床でのロケを説明します。使った機材は、Sigma Systems Engineering KS-342とSS-6002のEQとコンプレッサーのユニットを演者とのロケに使用しました。ある程度EQとコンプレッサーをかけて収録しました。SS-302は予備で持って行ったミキサーです。レコーダーは,Tascam DR-680で4チャンネルのマイクプリがりファンタム電源も供給できるものです。SDカードに収録でき、とても軽く持ち運びも容易でした。小型のZoom H2も使いました。ロケ現場にDAW(CuBase)も持って行って、ちゃんと音が録れているかとか、ディレクターとの反省会に使いました。背負子とDVCAM用アングルです。サラウンドマイクを背中に付けて、機動力を考えました。サラウンドマイクを背負子に付けるためにはカニのハサミのオバケのよう、DVCAMのアングルを使いました。VEも兼任しているので、カメラのバッテリーやテープなども後ろに積んで動けるようにしました。サラウンドマイクはDPA5100、水中マイクはDPA-8011、生産を完了したものですが、ヒビノインターサウンド様よりお借りしました。水中での会話を録音するために水中用咽喉マイク、ゼンハイザーMHK416、816。

木の中の音を録るために、MHE104とDC-78のファンタム電源を聴診器につけたものを用意しました。演者用にECM-77とSonyのワイヤレス、COS-11にRAMSAのワイヤレスを使いました。演者ロケをしながら、サラウンドでも収録できるシステムを考えました。

フロントのバックに4chミキサー、ワイヤレス、レコーダーを入れて、背中の背負子にDPA5100を付けました。システムとしては、演者のワイヤレスがKS-342に入って、SS-6002を1,2にわけ、MHK416、816の音は、タイムコードと合うようにCAMコーダーの音声トラックにも送りました。3チャンにボビーさんのオンリー、子供のジョイ君をクロストークした場合、使えるように単独受信機を付けました。4チャンはカメラガンです。あとは、DPA5100の1~6まで入れましたが、センターチャンネルにはMHK416、816などの、芯を拾うようなものを入れておかないと、DPA5100はベース音には優秀ですが、インパクトのある音を収録するために、このようなシステムにしました。演者の2人にも聞いていもらいたいので、SS-302でヘッドフォンでモニターしました。私も、収録時にはDR-680からモニターし、マイクを持ちながらクロストークを確認しました。

インサート用の収録は少しコンパクトです。 流氷の音(流氷鳴き)は、水中マイクをKS-342を通して、カメラとは別行動で収録しました。カメラ側はステレオにして、1、2chはマニュアル3、4chはオートにして、大き音で音が歪んだ場合に3、4chが使えるようにしました。

[ 視聴 ]

この後、樹齢3000年以上といわれるの屋久杉の木の中の音を取りたいと、ロケの4日前に依頼があり、NHKが制作したブナの木の音を聞かされ、こんな音が録りたいとリクエストがありました。どうやって木の中の音を収録しようかと悩んでいました。聴診器を途中で切り、単一指向のピンマイクを管の中に入れることにしました。この発想を思いついたのは、私の家族が看護師をしていまして、朝起きたら目の前に聴診器がぶら下がっていいて“これだ!”と思いました。屋久島に持って行っていいかと聞くと、“壊したらxxx!"と言われましたが、屋久島で半分に切ってしました。(一同笑い)オンエアーを見た、家族は激怒して、新しい聴診器を買わされました。医療関係のものなので、聴診器はちょっと高価です。でも、聴診器はクリアーに振動を伝えてくれるので面白いと思いました。


縄文杉までは、片道11kmで往復22kmの道のりなんですが(一同笑い)、演者さんと1日12時間かけて登って一泊して、私たちはインサート撮影中のためにもう一度行きました。最終日には体がボロボロで、今まで使っていた背負子は、使わずに軽量化しました。

ものすごく過酷なロケでした。しかしロケで、音を作るのは楽しいと思いました。屋久島での機材は、演者担当者から、ドキュメンタリータッチでロケをしたいとリクエストがあり、カメラがZ5Jで、音声もなるべく軽い機材を使いました。背中に、ワイヤレスマイク、自分の寝袋など私物を入れて、前には4chミキサーだけ出して、動きやすいものにしました。演者の方は6名でしたが、付けれるワイヤレスが3人だけだったので、ガンマイクを振りながら、カメラが凄い勢いで動くのについて行きました。結局ワイヤレスで送信せずに収録しました。その日のロケが終わって旅館などに帰ったときに、素材を編集するのにはCuebase5を使い編集、マルチチャンネルで書き出すときには、後でわかるようにキャプションを書きました。

また、これが厳しいスケジュールで知床ロケが終了した次の日に、CDの音を作りたいので、すぐに素材を送る必要がありました。飛行機で名古屋に帰り、120テイクくらい収録してもので使えるものを編集し、次の日の昼には、メール便でディレクターに送りました。屋久島の時も厳しくて、二日後には宮城へ中継の仕事がありましたが、行った先で300テイクくらいを編集し、ディレクターに送るなどと、ロケの後も過酷な作業でした。


音響仕上げは、中京テレビのMA2を使い、白素材をもらって、MAまでの時間ギリギリまで仕込むことを考えてPro Tools HD 7.4を使用して、映像を取り込んで作業しました。Cuebase5の書き出しのスピードは非常に早く、素材の編集にも助かりました。1~6chの頭のキャプションを付けたファイルが、そのままPro Toolsのトラックに、貼り付けることができ便利でした。最終的に、東京のイマジカさんへ持って行く時に、プラグインが再現するか不安だったので、サラウンドのAロールBロールにトラックダウンをして持込ました。4月23日にMA、5月1日に無事オンエアーになりました。いろいろな方の支援でロケができ大変感謝しています。(一同拍手)

Q:低温での機材トラブルや、また対処方を教えて下さい。
A:素晴らしい質問ですね。(知床ロケでは)とても寒く、Tascam DR-680の動作保証温度が0度までだったので、本体をウインドジャマーのようなもので包んで、USBカイロ使ってバックの中を温かい状態を保つようにし、快適に収録できました。ただ、電池の消耗が激しく1時間程度で切れ、予備バッテリーをいつも以上に用意しましました。屋久島は雨で、ヘッドフォンがショートしダメになったり、342が湿気でランプがいきなり点滅し本線が切れましたが、たたいたら直りました。(一同笑い)

Q:チャネルアサインは、何か工夫がありますか?
A:基本的に同録部分は、自然音なベース音を使い、(カメラの)同録したものとナレーションはハードセンターです。選曲さんの音楽やSEはLRです。MAで、不必要なものを検討しながらミックスしました。正直、何箇所かは同録の音を切った方がいい部分もありました。

Q:制作的には、サラウンドとステレオのバランスはどうされましたか?
A:最初のベースノイズは、同録をメインでサラウンドで包み込まれるように、「みなさん聞いて下さい」の部分は、ドーンとサラウンド感がわかるようにしました。聴診器の部分は、モノなのでCにアサインしました。

Q:水中マイクの部分はサラウンドですか?
A:プラグインでサラウンドにする方法は避けて、時間軸の違うOKテイクを、4方向に並べました。やってみると、同じ音ですが違うように聞こえ、包まれたような感じがあり、水の中にいるようでした。屋久島や知床でも使い、DPAの水中マイクはいいものだなと思いました。

Q:フクロウのリバーブは、後で足したものですか?
A:はい。本当に雪の中は無音で、録れているフクロウの音は大変小さく、プラグインのノーマライザーでレベルを上げてEQを使いました。リバーブを加えました。

Q:LFEはどのようにしていますか?
A:この番組では、ドンとアクセントになるようなもや、現場の雰囲気が伝わるようなものに付けてました。流氷鳴きの音は、ゴゴゴッと低音がありLFEを使いました。また、冒頭の花火の部分もLFEに送りました。逆に、屋久島の部分はLFEに送ると、低音鳴りのようになり、気持ち悪いのでほとんど使っていないと思います。小笠原では、船で移動する部分が多くあり、LFEを使いました。

Q:オンエアーを見て、違いはありましたか?
A:中京地区でのオンエアーでは、マスター(送出)のリミッターの影響があるのか、今後はそれを考えながら、サラウンドを作る必要があると感じました。

Q:音作りは、ご自身でロケをした生の音に近づけようとしたのか、それとも、それからイメージを広げようとしたのでしょうか?
A:非常に有難い質問です。屋久島の最後からの2日目のインサートの収録では、ヘッドフォンを忘れてしまったんです。(一同笑い)ヘッドフォンを使わずに収録したほうがいい音で録れていました。(一同笑い)そのときに感じたのが、やっぱり生音(現場の音)を聞くことが重要だなと思いました。最後の仕込みでは、生音に近づけようとしました。ただ、エフェクトが効果的な部分は、(生音にこだわらず)使いました。現場では、音声がヘッドフォンを忘れたことを、誰も気づきませでした。(一同笑い)

安藤:このロケに行くにあたり、サラウンド寺子屋のフィールドレコーディングについての報告、とくに高木さんや土方さんのレポートは大変役立ちました。ロケから帰っても、再度参考にして収録の方法を検討しました。

沢口:どうもありがとうございました。名古屋地区での出前サラウンド塾でした。こうしてさまざな機会を利用してサラウンド制作に取り組んでいる姿勢は、きっと全国でなにかやりたいけど、どうしたらいいのか分からないと悩んでいる潜在サラウンド派にも、大変刺激になると思います。あらためて今回の機会を作っていただきましたみなさん、そしてU-STサラウンドという試みに参画いただいた皆さんに感謝いたします。(一同拍手)

安藤:会場を提供して頂いた東海サウンド様、USTREAM機材及びstaff(3カメ・スイッチング)の全面協力して頂いたテレビシティーの夏原様、SRS CSⅡポータブルエンコーダーを提供して頂いた SRS Labs Japanの橋田様、Nuendo5のレクチャーをして頂いたヤマハ 山本様 この場をお借りしてお礼申し上げます。



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