April 25, 2004

第13回サラウンド塾 TOMITA ISAO サウンドクラウドの歩み 冨田勲

2004年4月25日
場所:三鷹 沢口スタジオにて
講師:冨田勲
テーマ:OMITA ISAO サウンドクラウドの歩み
Reported by 木村佳代子


沢口:今回は冨田さんにおいでいただき、サラウンド音楽の先駆者として活動されてきた歩みをお話していただきます。歴史を体験する貴重な内容をみんなでじっくりかみしめてみたいと思います。

冨田:私は、このメディアの仕事をはじめましたのが、昭和27年にNHK、まあ当時内幸町のラジオだけでしたけれども。それからすぐ近くにあるコロンビアというのが間借りしてて、日本コロンビアですね、そこで仕事をしてたわけですけれども。で、主に鑑賞用レコードのアレンジとか、大学2年の時でした、当時は作曲する者が少なかったんですねえ。結構いろんな仕事をやってました。その頃のレコーディングはダイレクトカッティングなんです。原盤といいまして、これぐらいの厚さのワックス、ロウで作った鑞盤ですか。これがミキサー室の横に山積みになっていてダイレクトカッティングをしてくんだけれども、編集はできないわけですね。だから楽団がNGをおこすとそこでストップして別な新しいのをそこにはめて又最初からカッティングするわけです。カッティング技師をいうのがいまして、で演奏が終わると最後のところあのストッパーをとめるための。あれは実は手でこうやるんですね。それを失敗すると、又演奏しなおすという(場内笑 ふっふっふ・・・)、編集できないもんですから。テイク3までつくるんですけれども、その中の一番いいやつはカッティングへいくわけですけれども、今でもレコードの、レコード会社原盤ということを聴きますけれども、今ハードディスクだとか、ていうことになってしまうと、原盤、ていうのが、何が原盤なのかよくわからない。だけどまあ、お金を出して、とにかく、その著作権とは別に、その音をつくったそのものが原盤。その原盤をやっぱり見た人間というのは、ちょ~っと古い世代の人間であると(場内笑 ふっふっふ・・・)まあ、僕らもう原盤という、あの言葉ていうのはすぐ「あれだ!」て、ピンとくるわけですねえ~。

天皇陛下がご成婚が決まったその時に皇居前で盛大な花火をあげたんですね、昼間に。それでその国税庁のビルが安普請なもんですから、花火の音が入っていちゃうんですね~録音の最中で『ド~ン!』と鳴ると、もおそれNGで(場内笑 ハハハ)。
元々音に対して子供の頃から妙な興味を持っていて。ま、糸電話をステレオで聴いた、ていうのは(場内笑 ハハハ)小学校4年ぐらいの(ハハハハ)・・・。まあ糸電話ていうのは皆さんご存知のあれですね。ところがステレオにするとですね、両方糸電話ていうのは、耳にこうつかなくちゃいけないんで、細工しなくちゃいけないんですね。竹・・・孟宗竹の筒を、先をボール紙でこう折って、うまくこう耳にあたるように。で、今みたいにセメダインとかそういうのはない頃なんで、あのーごはん粒をこう、練って、で、乾くまで手で押さえてるという。とか、絆創膏とかですね、そんなものを使って作ったんですが。これが大したもんです。菜の花なんかあって、今と違って虫や、いろんな虻とか、ていうのが来るわけですね。その音が本当にリアルに聴こえたんですねえ。で、『釣り糸』を使うと非常によく聴こえるんで。『木綿糸』なんかだと途中で音が聴こえなくなったりしてやみつきが今も続いちゃってると言う(場内笑 ハハハ)ことです。

シンセサイザーといったものが出てきて、それまでオーケストラの譜面を書いて、いろんなテレビのドラマなんかの作曲をやってたわけですけれども。モーグシンセサイザーというアメリカで考案されて。で、自分のアイデア次第によって、どんな音でも出るという装置だそうだというんで、早くそのモーグシンセサイザーを入れたいわけです。『MOOG』なんですが、あの『モーグ博士』、まあオランダ系の人だそうで、『モーグ』と発音するんだそうです。ま、普通『ムーグ』と言ってますけれども。(場内感心 へ~・・・)当時、ちょうど1970年の初頭ですねえ。演奏する音ていうのは、まあとにかく生身の演奏家が演奏する、それがあの、演奏。これが仮に録音されて、姿は見えなくても、その演奏者の姿があるという、これが常識だったものですから、そのシンセサイザーで創った音は、その演奏者の存在感がないというんで、平面的だとかなんとかまあかなり悪口を言われたんですが・・・。それじゃあ、存在感にあたる部分を、4チャンネルステレオを使ってその中に音が移動する、或いは近くにあった音が、4チャンのリバーブによって、遠くの方に離れて行ったりなんかするような事で、何かその音の存在感というものを出そうと考えて立体音響という事が始まったきっかけだったのです。とにかく自己流でやったんですが、今聴くと、ちょっと音をこう動かしすぎたかなあと思うんですけれども、当時4チャンネルのパンて言ったら大変なんですよ。2チャンであればね、パンポットなんてものがあったんですけれども。4チャンネルともなると、結局そのフェーダーがこう上げといて、次をこう上げて、こっちを上げて、こうやってこうやって(手のアクション)音を移動します。この技術は僕はかなり訓練しましたね(場内笑 ハハハハ)。今でもやらしたら結構うまいと思いますよ(ハハハハ)。

それではですね、ラベルの曲から聞いてください。これはあの、わがままな女王の周りをおもしろおかしい踊りをやって、ご機嫌をとるという、そういった曲ですが。

(曲リスニング中)

これどっちむいて聴いても大丈夫ですよ。特に正面は決めてませんから。
次は、『ムソルグスキーの展覧会の絵』の中の、まあよく僕はあっちこっちでかけているから、お聴きになった方もいるかもしれませんが・・・・ヒヨコがこう、ピヨピヨ遊んでるところをドラ猫がそれを食おうとする。すると親鶏がそれを一所懸命かばう自分の方へ猫の関心を向けてヒヨコを救おうとする。で、最後に、パッとその身体をかわしたら、勢いあまって猫がドブ池に落っこっちゃって、落ちたというところのオチなんです。これはあのお、『おそまつ君』という番組が当時流行ってまして、そこにニャン相の悪い猫が出てくるんですよねえ。それのイメージにしたんですが。

Q:すいません。その何チャンネルくらいのテレコ使ってましたか?・・・
A:えーとね、<アンペックス>の16チャンを使ってました。16チャンネルの中でやりくりしよう、ていうのはできないんでもう1つアンペックスの4チャンネルていうのを持っていたものですから予め4チャンネルに組んだもの、例えばヒヨコが逃げるようなところをその4チャンネル部分だけでいろいろ部品を作ってだから印刷と同じ、昔のオフセットの印刷のようなやり方をしたわけです。シンクロナイザーがない頃だったんで『カチンコ』ていうんですかねえ映画でいう。最初にカチンという音を入れといて、ヤマカンスタートして、それが合ってると後は大体あってるという。だから、その時のあのテープの伸び縮みとか、そういう誤差ていうのはどうしてもでてきちゃうんですけれども
あまりに長い、シーケンスは使わないで、なるべく短い範囲でいくつかまとめて、作っていきました・・・。
アナログで、クオリティを最後まで維持するのが非常にむずかしくて。弱い音の部分はその音を実際は弱い音なんだけれども、ゼロDB以上に全部組んどいて最終的な音量バランスの時に、最後に下げる。それからdbxの187を使ってました。圧縮が1/2でちょっとでも、そのテープに手垢がついたりゴミがつくと、ノイズも倍になって出てきますんでテープの扱いていうのは本当に神経使いました。だからテープを扱う時にはこの端と端しか、こう持たないという・・・。手は必ず洗うようにしてですね。だからピーナツとか塩飴なんかポリポリやりながらやったら、もお本当に大変・・・(場内/爆笑)・・・埃がつかないように。だから最後のミックスが終わるまではテープの保管にかなり気を使いました。
Q:おつくりになったのは、何年くらいなんですか?
A:これは70年代です。
Q:これはマスターは保管されてるんですか?
A:ええ、しています。
Q:オリジナルマスター?
A:部品も全部保管してます。
Q:音源はモーグだけ?
A:そうです、この頃は。この頃はそうです。ただローランドとかだったら小さなシンセサイザーも出してましたから。部分的にはそういうものも。装飾的な音で、すごくチャーミングな音のでるシンセサイザーがあったので、そういうのは利用してますけどね。ただ、当時まあ今から30年前でしたからできたけれども、もう今じゃとてもできないです。あんな作業はねえ。
Q:じゃあさっきのこうグルグルとまわるのはフェーダーをこうやって・・・。
A:フェーダーを・・・あの・・・まあ、こういう風にまわす場合と8の字にまわす場合とあるんですけれども・・・。それ、フェーダー、当時あの4チャンネルステレオを最終的に作ろうとしてましたんで。(手の動作)フェーダーをまずこっちを上げといて、まあそうすっとこうなりますよね。それでこーやって・・・するとこちらへくる。すると次にこうくる、そうすると(生徒/ああ、後ろに)つまりフェーダー4つを使ってこう・・・こう・・・(生徒/ああ、手が交差しちゃうんですね。)ええ、でもこうきてこうでしょ、で、こうくるんですが、一か所だけなんですよね(場内 ハハハハ 爆笑)。でもまあ結構馴れれば(アハハハ)それでうまくいったやつは、そのデータが残るもんですから。で、それで他にも使ったりなんかしたんですけどね。
Q:編集はできないんですよね
A:いや、アップデートはできるんです以前のデータと同じところへこのフェーダーを動かしてくると、そこに青いLEDがつきますので、そこでパッとオフにすれば、全く同じボリュームでつながるわけです(場内/ああ・・・)ところが再生ヘッドと録音ヘッドの間があるもんですからねえ。何回も繰り返すとだんだんおかしくなってくるんですが。一瞬その・・・ちょっと音が途切れて・・・そのデータが途切れても、そのままキープしてるもんですから、まあ・・・ごまかしごまかしやってました(場内/ふーーーむ・・・感心)。ただ16チャンネルのアンペックでそのデータ記録用チャンネルを2つ用意してないと・・・。まあ、1つのチャンネルでそのアップデイトして、そいで又前と同じレベルになった時にポッと元に戻す、ていうやり方もできるんですが、やっぱりそれをやって失敗することもあるので2チャンネル使って、片方のデータをキープしながらもう1つのチャンネルで修正するというやり方をしてたわけです。そうすると16チャンネルあっても、使えるのは14チャンネルですよね。それにモーグシンセサイザーを動かすクリックをよんでステップがこう動いていくわけですけれども、それのチャンネルはやっぱり2ついるとなると結局12チャンネル。そうすると12チャンネルとなると4チャンネルのマスターで3つできるわけですよね。その中でどうでもこうでも全てやりくりをする、ていうやり方でやってましたけどね。それでその3つをうまく、そのミックスしたものを別のアンペックスの方に・・・4チャンの方に入れて、それでそういう部分をいくつもつくって、後で並べるというようなやり方だから・・・まあ、dbx のノイズリダクションのおかげでアナログテープの割にはシャーノイズ出ず、済んだところですが。非常に大変だったのはアナログのマルチであるあのラクダのコブ、てやつですねえ。低音が、こう3デシ上がってしまうという(場内/ほお・・ほお・・・)。これがですね、dbxをかけると・・・まあdbxていうのは入れた時の状態・・・そのテープを入れた時の状態でかえってくるという想定で設計されてるもんですから。そうすると低音がそれだけ上がるとですね、なーんかおかしくなってくるんですよ。フワフワフワフワ。低音のあの、とまってる音ならまだいいんですけれども、こうストリングスは耳では同じような音量で聴こえても、実際メーターはこう振れてますよねえ・・・。だからその振れの通りに圧縮したりなんかしてるのが、こう・・・大きく影響してきちゃうんで。そうなるとこう低音が最後に入れ込まなくちゃいけないみたいな。だから低音入れたままコピーをやると低域がもこもこになります。スピードが76cm/secでやってましたから。多分38cm/secの場合はもっと下の方にいってしまうんで、あまり気にならないと思うんですけど76でやると、ええ・・・60ヘルツぐらいだったかなあ・・・あがってきてしまって1回コピーをしてもう1回再生に使うとその盛り上がってるヤツが又盛り上がってきますんでね。そこを下げるように工夫するんですが、うまく下げる、ていうのはうまくいかない。なーんか音が変わっちゃうんですね。

Q:それはテレコが・・・向こうのイコライザーがおかしいのでは・・・。
A:いやあ、アナログのテープていうのは必ずヘッドの形状効果があって、それはスピードで違うんですけど、100ヘルツで上がって、その下が下がってこう山場になるんですね。だからそのあるところ、60ヘルツとかが上がっちゃうんですね、アナログは必ず。うん、必ず上がる。
A:いや、だから1回録音の場合はそれでいいんですよね、一発録音の場合。こういう多重録音の場合は、ははは・・・相当辛い思いをしましたねえ。モーグシンセサイザーでこういろいろ音を作ったりなんかして、フィルターも全部意識して動かさなくちゃいけないわけですね。つまりブライトになるかアンブライトになるかっていう、こう、それを音量に合わせるとか、ていうのを。どんなにしてもオーケストラのまねをしたら、オーケストラというのができないんで、それで違った方向へ違ったアイデアの方に、えーもってったわけですけれども、例えばあの、ストラヴィンスキーの火の鳥の中これは途中に能のようなふざけた部分が出てきたりなんかして。まあ今でいうゲーム・・・ゲーム感覚ていうのかな。ゲーム音楽みたいな感じにしたわけですけれども。
Q:全部弾いてらっしゃるんですよね・・・(当然の事ですけど)。
A:ええ・・・だけど、こんな早くは弾けないから。半分の回転にして・・。
Q:すいません、テンポ管理は、さっきあのクリックでシーケンサーていうのがあったんですけども、その曲を通してのテンポがあって、それを最初に何か進行に沿ってつくる・・・
A:いやこれがねえ一番最初にクリック・・・所謂ドンカマてやつですねえ。あれを入れちゃうんですね。で、その時にはもう曲想が頭の中にできてないといけないんですけれども(生徒/えーえー)。それをですねえ、そのクリックを指示するためのアナログシーケンサーで早くなったり遅くなったりさせる事ができるんですよ。で、CVでそうなるとですね、キーボードとつないで、そのテンポの変化をそのクリックを聴きながら、譜面を書いちゃうんですね。つまりうーん、テンポがだんだんこう早くなっていく場合は、C(ツエー)からC#(ツエーシャープ)、D(デー)からていう、それをどのぐらいの早さでテンポ早くするかを聴きながら、これはもうとにかく指で弾くよりしょうがないですね。で、これは全曲やらないと。
Q:ドンカマていうと、どうしてもこう『カッコッコッコッ』ていう・・・・
A:ええ、そういう風にプログラムするわけですよ、そういう音が出るように。で、あのお、そのアナログシーケンサーていうのはボリュームで決めた電圧がそれぞれ変わって行くわけです。だからカッという音を出したければ、ちょっとボリュームを足して(場内/うんうんうん・・・)で、『コッコッコッコッ』というのにして・・・その4ステップをまあ繰り返しするわけです。ただ変拍子もありますからね。そうすっとそこの部分が、頭のあとで、耳で聴いて頭のある音、つまり一拍が高い音になる。その頭の音ていうのを決めるわけですけれども。最初はただ『プップップップ』だけなんです。だから途中で一拍見落とすと(場内/ああ・・・)あとは全部そのクックックッていうのを聴きながら、そうすると楽譜上にそのドレミファじゃなくて、いやこれはC#(ツエーシャープ)でこの辺でした方がいいだろうとかアチェランドする場合ですね、だんだんそのクックッてのを聴きながら、その通りに鍵盤を弾いてくわけ。(場内/大変ですねー・・大変・・・)アルバムつくる場合は音をこうブラインドかけといて、それで3度・・・長3度ぐらいで下におりてくと。で、最後フェルマータの場合は離れたところでキーボードを押せばフェルマータになりますからね。これはねえ、音を組んでって、いやしまったこれは・・・ていうことに気がついてももう間に合わないんですね。だから決めたテンポの中で、どうやってその・・・今度は音色とかですね、演奏の仕方でもってくかっていう。いろんなものが絡んでるんで、大事になりますね。下手すると3日・・・(場内/フフフ・・・)

どんなのやりましょうか?パシフィックなんかよくかけましたかね?蒸気機関車、SLの・・・。
Q:プラネッツか・・・。
A:まああれはさんざんかけたんで(場内/笑)。じゃあ、『パシフィック231』。で、これは劇画みたいな感じで勿論サラウンドにはなってるんですけれども、そのどっちの方向へ進むとか、そういう事じゃなくて、車輪のアップだったり、或いは汽笛を湯気を出しながらパーッとその音のしている汽笛のアップであったり、ま、そういう様な感じで描いてみたんですが。途中、駅をこう通過する時のポイントの上を走る感じとか、僕は割と鉄道マニア的なところもあったんで、非常に楽しみながら作ったわけです。まあ蒸気機関車ていうのは、なんか僕らが子供の頃は、もう全部殆ど東海道線の機関車だったわけです、あのお、なんでしょうか、猪突猛進ていうか、・・・なかなか速くならないんですよね、スピードが。だから僕らが小学校の頃は、客車の窓が自由に開け閉めできたんで、弁当売りのおじさん達や、おばさんなんかもホームにいっぱいいて、首から吊るしてですね。アイスクリームとかアイスキャンディーを売ったり、それから弁当なんか売ったりなんかしてたんですけれども。動きだしちゃってから『あれが欲しい。』と言ってもちゃんとついてきてくれるんです。ホームの端まで行ってもそんなにまだ速くならない。ちゃんとツリまでくれて。なんという時代です。ところが一旦速くなっちゃうと今度は止まるのが大変のようで、もう駅の随分前あたりから、スピードを落としてくるんです、今の電車からしたらちょっと考えられない・・・。だけどやっぱり、あの尖ってる時の・・・湯気を吹きながら尖ってる時、ていうのは、怪物がですね、これからなんかしでかす前の、じっと息をひそめてる、ていう感じがしてスリルもあって、非常に僕は好きだったんですが。・・・・。それをまあ、描いてみました。これも同じ様な行程で、テンポが途中で変わったりなんかしてますけれども。今のようなやり方で、テンポをまず決めてドンカマ『カッカッカッ』ていうのが決まれば、それをよんで、シーケンサーが『カッカッカッ』てそのドンカマの音をよんで、アナログの音を直流に変える『エンベロープ』というのがモーグシンセサイザーについてて。そうするとパルスになるわけですね。で、それを2分割にしたりすると、その『カッカッカッカッ、カッカッカッカッ』というのが『カッツカッツカッツカッツ、カッツカッツカッツカッツ』と裏がでてくるということで、それをよんでシーケンサーが自動的に動いてく。それも一台が24ステップですから、僕は、3台しか持ってなかったので、かける3でもう終わっちゃうわけです。だから、短いフレイズの間でうまくその区切りをですね、どこで区切りをつけるかってことを決めてやらないと。まあ勿論スピードを遅くして手弾きていうのもあるんですけど、シーケンサーが随分とそういうやり方をされましたね。一か月くらいかかりましたね・・・もうちょっとかかったかなあ・・・。

それでは、『源氏物語幻想交響絵巻』を、実は、モーグシンセサイザーをはじめたきっかけというのは・・・。それまでオーケストラの曲を書いてたわけですけれども。やはりその音源が誰が使っても同じ音色だ。ホルンはホルンの音だ、それからバイオリンはバイオリンの音色だ、ピアノはピアノの音、というのがですね、譜面を書いてて、今その書いてる譜面ていうのは、もう既に誰かがやってんじゃないか、なんかそういうおかしな妄想にとらわれてきたのと、確かにワグナーまで、モーツアルトの頃からワグナーまでの100年ていうのは、ものすごく楽器が改良されて、もう最高のところまできましたよね。それから現代まで楽器の改良というのは殆どなされていない。ていうことはもう、オーケストラの音はどれももう最高の音になってるということは分かってるんだけれども、じゃあ自分はどうしたらいいか、ていう時に、なんかやる事がない、みたいな・・・、その時期にモーグシンセサイザーがでてきたんで、もうオーケストラ、ていうのはもう新しい曲を作る意味がないんじゃないか、て思ったんですよ。まあ、ちょっと浅はかだったんですがねえ。それで、・・・80年代の後半になってから、又再びオーケストラをやりたくなって。今、手塚治虫さんのジャングル大帝のリメイクなんかあったりした時に、やっぱり手塚さんがオーケストラの音が好きだったんで、オーケストラの編成で、その時はシンセサイザーは使わなかったですけれども・・・・やったり、それから映画なんかも・・・大河ドラマなんかも、その頃やってましたけれども、これはやっぱりオーケストラですね。N響がテーマを演奏すると。それでやっぱりオーケストラはまだ自分がやり残してることがあるなじゃないかということで『源氏物語幻想交響絵巻』を書いてみたわけです。これはシンセサイザーも入ってます例えば生霊の部分などです。オーケストラはロンドンフィルでロンドンで演奏した時も、そこの部分ていうのは、シンセサイザーのエフェクト、それからローランドのRSS なんかを使ってやったわけですけれども、オーケストラなんかでいくらどんな表現をしても、夜中に生霊が浮遊する、ていう感じは、シンセサイザーを使って、ローランドのRSSを使って場所によっては、その座席の中で、ふっとこう耳元までその・・恨みの声が『フッ』と耳を通りすぎるみたいな効果は・・・これはねえ、まあ今までの電気のない頃に相当凝った事をやったワグナーのその連中もやってみたかった事ではないかなあ・・・と思うんですがねえ。彼らは後ろの方でコーラスが聴こえてきたり、なんかすごくその立体的な音響ということに思考を凝らしてた連中ですから。ただ電気がなかったんですね、あの頃ねえ。
冨田:じゃあ1から・・・雅の春、桜の季節ですねえ。そのあたりから・・・

(リスニング中)

Q:オーケストラの録音された時は、どのようにされたんですか。・・・。なるべくセパレーションして・・・位置は普通のオーケストラの位置ですか。
A:いえいえ、もう・・・全くこだわってないです。・・・・
Q:じゃあパートごとに・・・
A.:ブラス楽器は大きいんでブースに入れちゃったんですね。そうでないとストリングスの方に入ってきちゃうんで。だからもうオーケストラの配置は全く無視してます。やじろべえの感覚でいくとバランスが悪いような気がするんですよ。僕はオーディオの場合はやっぱり低音ていうのは均等にスピーカーが充実した低音を・・・低音ていうのはオクターブ下がる度に、倍、倍にエネルギーが増えていくから、それは負担かかりますよねえ、右の方が。それはどうも僕は・・・誰があんな配置決めたんだろうと・・・(場内/笑)。ビルでいえばやはり真ん中で支えてるから塔でもなんでもいいんで、それが片方だけにあって、ていうのはなんかこう不安定な感じがしますよね。僕だけなんですかね、そんな事思うの ・・・・


等々4時間に渡るサウンドクラウドの歩みをデモを交えて話していただきました。全てを書いてますと長ページになってしまいますので、ここら辺で中締めとします。続きは冨田勲 著「音の雲」NHK出版¥1700でお楽しみください。終了後のWINE PARTYはいつも以上に盛り上がりました。(了)


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