December 10, 2000

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「サラウンド入門」は実践的な解説書です

October 10, 2000

駆け足で見るサラウンドの歴史

By T.Holman 2000-10 抄訳:Mick Sawaguchi 沢口真生

1 1500-1999年代
サラウンド音声を考案したのはエンジニアが最初ではない。この表現手法を考えたのは、今から400年前の1500年代に活躍した作曲家や音楽家であった。
教会音楽はフロントの両側やフロントとリアの関係を使い参加者の周りで荘厳な雰囲気を醸し出すためにサラウンドを利用している。教会の中にはオルガン自体がフロントとリアに分離されている場合もあった。
モーツワルトからベートーベン、マーラーそして現代のターミネーター2までの変遷をみるとより広い周波数レンジ、特に多量の低域そして広いダイナミックレンジに加え、空間表現を積極的に使用し映像外の音や観客の背後の音を使うようになったことが特徴と言える。

2 1930年代
1934年にBell研究所は当時ヨーロッパで先行していた立体音響を具体的な方法で提示するため無限チャンネル音波波面合成理論を簡略化したフロント3チャンネルステレオを生で公開デモした。Alan Blumleinは、両指向性マイクをクロスに配置した振幅差方式でステレオ音声を光学記録することに成功し、後に45-45方式というレコード記録カッターヘッドを発明している。
45-45方式で導入した左右と上下を利用するという考え方は、現在の10.2-サラウンドに先行すること60年というアイディアである。このBell研の3チャンネル方式とAlaneのワンポイントステレオは今日の「A-Bステレオ」と「同軸ステレオ」の両方式の基礎となっている。
1938年には、Walt Disneyが自宅の居間に座ってFantasiaのための新たな音響表現としてのサラウンドの可能性を様々に考案していた。この様子は1999年に彼の兄弟RoyがL.A Timesに寄稿している。Waltは、当時のスタジオ経営に起死回生のインパクトを与えるためのアイディアを考えていたのである。そのアイディアは飛行機でBumblebeeに向かう機内でひらめいた。いわく、機内に一匹のミツバチが飛んでおりそれがぐるぐると前後左右を飛んでいる音が耳にはいったことがヒントとなったというものである。Disneyのエンジニアはこのアイディアの実現のためにフロント3チャンネルの方式をBell研から借用しそれにリアを2チャンネル付加した「Fanta Sound」を考案した。これ以外にも多くの方式を実験したようであるがフィルム音響という物理面とマニュアルでのコントロールの簡便さ、さらにマルチチャンネルの有効性を両立させるとこの方式が妥当であると判断したためである。

3 1940年代
デズニーがFanta Soundを開発したが世界大戦の影響もありこのシステムで上映できたのはわずか1館のみであった。戦争の影響は同盟国を援助するという点に及び、特にソビエト連邦との関係が密となった。映画を使用することにソ連は敏感でレーニンは「映画を我が国の芸術に!」と号令をかけた。
Fanta Soundの機材は、丸ごと梱包されアメリカ海軍の商船に積み込まれ北大西洋を経由してソ連へ寄贈されることになった。しかし、ドイツU-ボートの攻撃でソ連に到着することはできず今日もその機材は海底に眠っているのである。一方戦争がもたらした技術革新の恩恵は映画音響にも貢献することになる。例えば、30年代の劇場再生スピーカは磁界を発生するために巨大なコイルがスピーカ背部に巻き付けられたフィールドマグネチックという方式であったがこれがアルニコの永久磁石に替わることができた。これは戦闘機のパイロットが被るヘッドセットの磁石として開発されたPermofluxの恩恵である。
また従来のエクスポーネンシャルタイプのホーンはマルチセルラー ホーンへと改良され聴取範囲が飛躍的に向上した。これらの要素を映画音響にとりいれたスピーカとして「Voice of Theater」シリーズはその後35年間君臨することになる。当時最良の音を聞けるのは映画館であった。

4 1950年代
家庭へのTVの普及が戦争の影響で足踏みしていたがやがて普及に弾みがつき始めるやいなや、すさまじい勢いで浸透していった。そのため映画館観客数は30年代に比べ激減しTVにその座を奪われてしまった。FOXグループは、シネマスコープ大画面とフロント3チャンネル、リア1チャンネルを配置した4チャンネルの音響をもたらし、反転に転じようとした。リアの1チャンネルは主に効果音再生に使用され劇場の観客を取り囲むような配置とされた。さらにサラウンドスピーカが多数配置されたことによるヒスノイズを低減するためのノイズリダクションも考案されている。これには12kHzのトリガー用信号を使用しリアチャンネルをノッチフィルターでon-offする仕掛けである。しかし、上映機器の不安定性からon-off動作がうまく働かないこともしばしばであった。
続いてE.テイラーの夫で起業家のM.Toddによりが70mmフィルムと6チャンネルの音声トラックを持つTOD-AO方式が考案された。「80日間世界一周」のプレミアショーでは、休憩時間がくるまで不安げにロビーで座っていた彼だが、休憩時間でロビーに出てきた小柄な批評家をつかまえて「サウンドはどうでしたか?」と聞くと「いたるとこ音が溢れていたよ」との応えが返ってきたというエピソードが残っている。
確かにフロント5チャンネルとリア1チャンネルの構成は、隙間のない音響空間を作り出していたのである。やがてこの方式で「オクラホマ」や「南太平洋」が制作されるようになる。M.Todd は、不幸にも飛行機事故で無くなってしまうが、彼のまいたマルチチャンネルの萌芽は、高品質音響の世界に足がかりをつけたといえよう。50年代の終わりには、家庭用のステレオLPが45-45方式で登場することになる。

1960年代
ステレオLPの出現は、その後のステレオ音響に強力な弾みをつけることとなった。ステレオFM放送、4トラックオープンテープ、カーオーディオ用8トラックテープそしてカセットテープ等である。しかし2チャンネルでは限界があるのも事実である。H.Hancockもコメントしているように実際の音は、あらゆる方向から到来している。この具現化が「4チャンネル ステレオ」であった。残念ながら方式の乱立でコンスーマは困惑し、音響心理学者は後ろ向きな発言しかしなかった。そして次に使えるサラウンドサウンドが登場するまで実に30年の歳月が流れたのである。(了)

「サラウンド制作情報」 Index
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September 10, 2000

クラシック サラウンドマイキングの検証

抄訳:Mick Sawaguchi 沢口真生

[ はじめに ]
現在オーディオの世界で、ホットな話題と言えば5.1chサラウンドである。
ステレオ録音に関した文献や書籍は、すでに溢れるばかり存在しているが、5.1ch録音に関した文献は、まだ道半ばといった段階である。世界中のエンジニアが現在様々な5.1 ch録音技法を開発中である。この記事も現在我々が実験しているマイキングについて述べたものである。

1  目指すものは?
クラシック音楽録音を行っている私の考えは、「5.1chマイキングで自然な録音が可能か?」にある。私は、良い録音とはコンサートホールの体験を家庭で実現することだと信じている、やや古いタイプの人間に属し「Hi-Fi」を目指している。これとは逆に、自然界には存在しないような音を創作し、優れた音を作り出すことに意義を感じているエンジニアもいる。5.1chが作り出す環境が録音現場の正確な再現能力を持っているかどうか?を検証するには、ロケット科学者並の知識と能力がいるわけではない。古くは1972年の安藤の研究やDamaske、そして1988年のHolman等の研究から自然な広がり感を得るには、最低でも5チャンネルの情報が必要なことが分かっている。この特徴は、2チャンネルステレオでは全ての直接音、間接音、音情報が前方からのみ再生されることによる、基本的な欠陥を補うことにある。チャンネル数が増えることで、我々エンジニアが考える音世界をより柔軟に再現できるようになったと言えよう。

2  実際の録音で何が問題か?
5.1chの録音と家庭での再生を行う場合、常に私の頭をよぎる疑念が4項目ほどある。それを以下に述べよう。

2-1:5.1chのマイキングは全く新たな考えで開発しなければならないのか?
それとも今までのステレオ録音のマイキングを基礎に3つのマイクを付加していくのでいいのか?

2-2:リア用マイクは、どこに設置するのがベストなのか?フロントマイクから離してホールの後方なのか?
それともフロントマイクに近接するのか?

2-3:音楽専用の5.1chではセンターチャンネルは、どの程度重要なのか?

2-4:ステレオとのコンパチビリティはどうすればいいのか?ステレオが登場した初期には、同様な問題がモノーラルとの両立性という観点で行われてきた経緯がある。5.1chの素材からステレオdown mix を行うことでいいのか?それともステレオ専用の録音をしなければならないのか?あるいは自動的にステレオへのdown mixが行える機器で十分なのか?

3 解決方法
私は、まず5.1chのマイキングを検討することから始め以下の方式とした。
CH-1 LEFT-FRONT
CH-2 CENTER-FRONT
CH-3 RIGHT -FRONT
CH-4 LEFT-REAR
CH-5 RIGHT-REAR

マイキングは「自然さ」に注目し極力ワンポイントに近いマイキングを検討し、また極力標準化できることを目指した。最初の試行は、ステレオマイキングに3本のマイクを付加する方式である。その理由としてはステレオマイキングと極端に異なることは無いだろうという思いからである。クラシックのホール録音では、フロント側が殆どの情報を捉えており、リアは反射成分を捉えているからである。このため私が25年間使用してきたステレオマイキングを応用することにした。ここでの挑戦は、センターマイクとリアをいかに臨場感を高めるために寄与できるか?にある。

4 センターチャンネル
センターチャンネルに着目して多くの実験録音を行った。先にも述べたがセンターチャンネルの本来の目的は、映画におけるスクリーンと台詞の定位を安定させるためであり、故に「台詞チャンネル」という呼び方をされるくらいである。
オーケストラ録音では、同軸方式のブルメラインやM-Sステレオ録音で十分な音像が確保されていると思っているので、私は、センターチャンネルの音楽的な意義はあまり感じていないのが実際である。また頭の間隔くらいに広がりを持たせたBDTやORTFペアマイク方式でも、同様にセンター情報が十分捉えられている。こうした現実の中ではセンター専用のマイクをどのように扱えばいいのだろうか?家庭でセンタースピーカを設置した場合は、通常のステレオ配置に比べL-Rの間隔は広がるだろうと仮定してみた。このことでより大きな音場を形成することができ映画のダイナミックなサウンドを堪能することができる。
この状態でステレオ録音の音楽を耳だけで聞くと多分中抜け状態となることだろう。そこでL-R信号をセンタースピーカへ少しこぼす実験をしてみた。しかしこれは音場を狭くするだけで効果的ではなかった!
次に行った実験は、ステレオペアマイクにセンターマイクを付加して録音することだった。これは先ほどの方法よりも効果があったが、ペアマイクの近接距離が災いしてクシ型フィルター効果を生じ音質劣化を発生してしまった。
使用したマイクがAKG C-414だったためもありセンターマイクはL-Rペアの逆さに取り付けてみたが十分すばらしいフロント音場を形成することができた。「これぞオーケストラ!」といった印象である。ステレオペアの時に比べて間隔を離し27cmで録音を行ってみたが、芳しい結果ではなかった。

次にリアマイクの設置についての実験を試みた。これは2種類行い、ひとつはメインマイクの近傍に設置、もうひとつはホール後方に離して設置してみた。近傍に設置した場合は、マイクの指向性を単一指向、または超指向性にして、前方からのかぶりを極力抑制するようにした。私が気に入った結果は、メインマイクから40cm離して、単一指向性でリアに向けたセッティングである。もうひとつのホール後方に設置した場合は、録音レベルも低く使いものにならなかったので、レベルを上げてみたが、フロントとの位相差が感じられ、特に全指向性のマイクを使用した場合に顕著であった。リアの音が良かったのはメインマイクから30cm離し単一指向性でリア側に向けた場合であった。17cm 20cm 27cmと様々距離を変えてみたがこの30cmが一番好ましい音であった。だがその差はわずかである。リアマイクにショットガンマイクを使った場合は、レベル的に十分なゲインをとれるが、音質的には、単一指向性と殆ど変わらず、残響音が不自然に感じられる結果であった。

一連の実験を終えた後、私はVillage blacksmithの所へ行き、特注で5.1ch用のマイクマウントを制作してもらった。これはH型をしており前後の距離は30cmにしてある。バーの長さは30cmでORTF用の17cm BDTマイク用に20cmそして一般用に27cmの穴も作ってある。このマウントキットにより各種の実験が手軽に行えるようになった。

5 レベル
自然な広がりを得る上でリアチャンネルのレベルは大変重要である。そのためには同じマイクを5本そして出力も揃ったマイクを選択しておく必要がある。
フロントの3本はほぼ同じレベルをピックアップし、リアはそれに比べてレベルが低く録音されることになる。しかし、これで自然な空間が再現されるはずである。

6 ステレオとの両立性
私のマイキングの基本は、ステレオに3チャンネルを追加した方式なので、ステレオとの両立性は問題ない。試しに5チャンネルの出力からステレオ2チャンネルのMIXを作ってみたが、L-Rのマイクで録音した場合に比べ不満足な結果であった。将来5.1CHと2CHステレオが同時に記録再生できるとすれば、この方法で何も問題なく実現できることになる。

おわりに
様々な実験を行った上で、私が下す結論は、5.1CHのサラウンドは従来のステレオに比べ、はるかに素晴らしいコンサートホールのリアリズムを提供出来るということである。マイキングについても従来のステレオ手法に3本を追加する方法で何ら問題はなく、複雑な手法を用いる必要もないことが確認できたことは有意義であった。映画に限らずピュアオーディオの世界でも5.1CHサラウンドがクラシック音楽の新たな楽しみ方を提案できる可能性に大いに期待が持てる実験であった。(了)

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August 10, 2000

サラウンド マイキング SWISS SOUND ARTの試み

Studio Sound Aug号 抄訳:Mick Sawaguchi 沢口真生

[ はじめに ]
サラウンド録音の現状シリーズ第2回目はAWISS SOUND ARTの行っている
音楽録音マイキングについてレポートする。

我々は、ステレオ録音とすでに1世紀以上も付き合ってきたが、それでもまだ新しい録音手法について研究している。何世代にも渡ってエンジニアやプロデューサは限りなく多くのテクニックや、それらを工夫改良した表現を行ってきたが、まだ、どれも完璧といえるものはない。同時になんでも使える手法というものが、存在しないことも事実である。もし規則があるとすれば、「規則がないということが規則」かもしれないし、ある条件下で良い結果がでれば、それが新たな規則となるのである。
これに比べて、「サラウンド」はよしんば60-70年代にambisonicを始め、一部の熱心な制作者が存在し注目された時期があったとしても、全くの新参モノでしかない。いまだ2チャンネルステレオが主流の中で、ほんの一角を占めているだけであり、果たして家庭の中にどれほど浸透していくかも定かではないのが現状である。映画音響の世界では、5チャンネルのサラウンドレイアウトが定着しているが、こと音楽に関しては、どのようなフォーマットが「基準」となるのか明確ではない。理想主義者は映画のフォーマットでは音楽サラウンドに不適切であると言を荒げ、他に適切な方式があるはずだと主張している。
一方で現実主義者の人々は、与えられたフォーマットの中で、どれほどのことが出来るのかをやってみようと腕まくりして制作を始めてきた。

機材の面では、いくつかのメーカが5.1CHマルチチャンネル対応の製品を市場に提供しはじめたが、マイキングの研究については、まさに端緒につきはじめた段階である。
こうした先進的な取り組みを行っているグループのひとつが、スイスを拠点とした「Sound Arts AG」である。このグループはドイツデトモルト大学でトーンマイスターを取得した人々が中心となって設立したグループで自身のCDレーベルPAN CLASSICSを持ち、現場録音から編集、マスタリングまで一貫して担当している。メンバーはClement Spiess  服部公一郎 Jens Jamin  Simom Foxの4人でプロジェクトに応じてプロデューサからバランスエンジニア 編集となんでもこなせるチーム構成が可能である。彼らの活動は昨年Brauner SPL 5.1CHマイクロフォンアレーによる録音を本誌でも紹介したが、彼らはこの方法で従来の経験をいかしたサラウンド録音を可能とした。同様のマイキングはLucerne Hallで一連の録音シリーズとして継続されまた、ホール郊外の山にある教会でも行われた。本リポートで訪れた時は、スイス青年中央オーケストラの録音の最中で、ブルクナー第6番を録音していた。今回のメインマイクは、Sounfield MK-VとSP451プロセッサーが新たに加わり使用されこの方式は、まだ開発中で録音には出来上がったばかりの新しいプロトタイプが使われた。

Sound Artsの基本ポリシーは実に単純で、「リスナーが最上の席にいて聞こえる演奏空間をリアルに作り上げる」点にある。このためにサラウンドチャンネルに特殊な工夫をすることはなく、オリジナルの空間を忠実に捉えることのみに努力している。こうして録音したサラウンド音楽を聴くとステレオ録音の場合に感じる窓外から音楽を覗いている印象に比べ、リスナーの眼前にすばらしい奥行きと空間を再現することができる。
サラウンド録音を目的として設計されたマイクロフォンは、今までもいくつか存在し、例えばNeuman SM-69を4カプセルユニットにしたモデルや、本誌でもリポートしたSPLや、全空間を4つの近接カプセルで収音するSoundfieldマイクなどが挙げられる。
このマイクは、全球面方向のカプセルという大変ユニークな構造であるにも関わらず、その空間再現を正確に行える優れたデコーダが無かった点や取り扱いと音質の面でイマイチであったことが欠点で、サラウンド録音にあまり使用されなかった。高さ情報を本質的に持つこのマイクを活かすには優れたデコーダの開発が不可欠でありこの問題を解決したのがSoundfield reserch社である。

SP451というモデルがそれで、マイクコントロールBOXから受けたB-フォーマットの信号から、様々な構成のサラウンド出力を得ることができる。最大出力は8チャンネルで、サラウンドのレイアウトはMAP(Microphon Array Pattern)カードの切り替えにより選択する。本機の特徴はサウンドフィールドマイクのみでなく、5チャンネルの単一指向性マイクを使用して、サラウンド空間をコントロールすることも出来る点にある。この場合我々の経験では、センター用マイクのレベルは他に比べて-10-12dBほど低い方が良い結果であった。センターを明確に使用する場合は、台詞の録音などで有効であろう。
デコーダに内蔵されたワイズコントロールにより、センター成分の広がりをコントロールしたり、指向性コントロールでリアのマイクをコントロールすることで目的とするサラウンド音場を非常に自然に録音することができる。また前後のマイクの指向性を様々に組み合わせるとフロントとリアの音場をより積極的にコントロールすることが出来る。
Bフォーマットで録音しておくメリットは、ポストプロダクションの段階でMSステレオと同様に調節がきく点にある。録音する信号は、MK-V ST250サウンドフィールドマイクからダイレクトにB-フォーマット信号で記録するか、Ambisonicミキシングシステムから取り出した4チャンネル出力を記録し、これらをポストプロダクション段階でコントロールすることで、あたかも収録会場にあるマイクをコントロールするように音場をコントロールすることが出来る。

この特徴は、限られた条件下でのサラウンド録音に大変有用であると考えている。こうして得られたサラウンド音場は、スピーカーの配置のいかんに関わらず大変自然な音で、将来は、今日の標準5チャンネルレイアウトに適したデコードが可能なG-フォーマットがSP452プロセッサーで可能となることを期待したい。こうなると実に有効なサラウンド録音ツールになり得るだろう。
これ以外のマイキングで録音したサラウンドも我々は、試聴した。使用したスピーカは新開発のManger Zeroboxというモデルである。
ひとつは、Atoms 5.1録音をSPLでコントロールしたサウンドで大変感動的なサウンドであった。こうしたオーケストラ録音で難しい点は、楽器個々の明瞭度とオーケストラ全体の空間のバランスをいかに再現するか?である。しかし、この方式は両者のバランスを実にうまく再現していた。

Sound Artsのメンバーは、1998年の12月に行ったサラウンド録音実験で、ピアノコンチェルトを計8本のマイクで録音し、Deccaツリープラス補助マイクの組み合わせで、ノイマンKM143sを5角形のレイアウトとして設置フロントマイクはステージから2-3m間隔で高さ3mにし、サラウンドマイクは客席側へ8m間隔で10mの高さに設置した。
メインのピアノも楽器の輪郭を捉えるために小型のDeccaツリーとして3本のマイクを設置した。このマイキングは大変すばらしく音楽を捉えることができ、全体のオーケストラ空間と明瞭なピアノがうまくバランスした。
この方法は、それから半年後のセッションにも有効に活かされた。このセッションではフロントに拡大ORTFマイキングペアが使用されその両側6m間隔でB&K全指向マイクをペアで配置、それにいくつかのスポットマイクというフロント構成でリアはORTFペアのノイマンKM143Sとそこから6m後ろに全指向ノイマンKM130ペアを配置した。
録音は2通りで行い、ひとつはそれぞれをダイレクトにミキシングし、もうひとつはメインマイクからの距離に合わせて精密な遅延調整を行ってミキシングされた。これは特段新しい手法ではなく、ステレオ録音でも従来から使っていたが、今回のサラウンド録音でも初期の目的に十分応えてくれたと言える。

この2つのサウンドはどちらもすばらしいものであるが、個人的な印象では、遅延無しのダイレクトミキシングの方が、自然で豊かな空間が再現され心地良い感じであった。
いずれにせよSound Artsではシンプルなマイキング構成から複雑なマイキングまで、様々なナチュラルサラウンド録音手法を実験、開発しており、ここから思いも描けないような素晴らしい結果が得られたり、逆にこれは使えない、といった結果を経験している。
こうした経験を積み重ねることで我々は、セッションに応じてどのようなマイキングが最適なのか適正に判断し、さらに経験を重ねていくことができる。これはあたかもステレオ録音で我々が経験してきたアプローチそのものでもある。(了)

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January 6, 2000

サラウンド寺子屋報告 Index



第94回 サウンドイン・スタジオのサラウンド配信の実情とその背景
第93回 サラウンド音楽制作を前提にスタートした「HD-Impression」の制作アプローチ
第92回 デハイト・サラウンドへの可能性 - 名古屋の最新サラウンド制作
第91回 デジタルマイクロフォンの原理と制作の実際
第90回 ヘッドフォン再生での自然な定位を再現するHPLテクノロジー
第89回 3Dサラウンド制作から家庭再生までを考える
第88回 ハイレゾ & 3Dサラウンド at 神戸
第87回 SHV 22.2CH音声制作の最新動向
第86回 サラウンド フィールド録音を応用した空間演出の実際
第85回 演奏音の最適残響レベル 2013年九州大学博士論文研究より
第84回 2013AES JAPAN学生サウンドアワード受賞サラウンド作品の試聴と解説
第83回 THE ICE 2013完全版 サラウンド制作 / ドイツのトーンマイスター教育とサラウンド録音
第82回 最新 192khz-24Bitハイレゾサラウンド音楽制作と試聴
第81回 小規模プロダクションでの4K映像・サラウンド制作について

第80回 Canon C-300によるデジタルシネマ「KEYNOTE」制作
第79回 名古屋制作による最近のサラウンド番組制作を聴く
第78回 東宝ポストプロダクションスタジオ構築の舞台裏
第77回 最新サラウンド音楽の試聴と制作解説
第76回 LIVE SPACEにおけるサラウンドPA構築と制作
第75回 フィールドサラウンドにおける6種マイキングと主観評価
第74回 インパルス応答特性に注目した「良い音と正確な音」を科学する
第73回 サラウンド寺子屋 in 名古屋 Part.3 サラウンド・スケープのコンセプトと試聴
第73回 サラウンド寺子屋 in 名古屋 Part.2 サラウンド番組のデモと解説
第72回 「源氏物語幻想交響絵巻・完全版」「惑星(プラネッツ) Ultimate Edition」サラウンド制作について
第71回 Sonnox Fraunhofer Pro-Codecを使った配信用サラウンド・データの仕上げ方

第70回 ライブとレコーディングのサラウンド音楽制作について
第69回 3D映像とサラウンド音響 Part.2 WFS技術 原理とその応用 15/12-2010
第68回 体感3D映像とサラウンド音響 20/11-2010
第67回 C-TVアニメーションのサラウンド制作 27/06-2010
第66回 NHKスペシャルドラマ 「坂の上の雲」サラウンド制作 ワークフロー 16/05-2010
第65回 自然が奏でる驚きのメロディ サラウンドロケから制作まで 04/04-2010
第64回 日東紡音響AGS拡散吸音体の解説とSOUND LAB見学 14/02-2010 
第63回 交響詩ジャングル大帝のサラウンド制作と大学の取り組み 18/10-2009 
第62回 夏休み特別講座実践編 家庭で作るサラウンドデモDVD 30/08-2009
第61回 芸大メディア出版会サラウンドSA-CD制作「ホルベルグ組曲」MIXとSA-CDマスタリング 20/07-2009

第60回 初映画ドキュメンタリーサラウンド「パンダフルライフ」JPPA2009MIXING受賞作品の舞台裏 14/06-2009
第59回 SRSサラウンド デモDVD制作と音響デザイン 24/05-2009
第58回 東大寺世界自然遺産登録10周年記念野外コンサートのサラウンド制作 26/04-2009
第57回 芸大学生のアートパス出品サラウンド作品を聴く 18/02-2009
第56回 国際共同制作で失敗しないサラウンド制作 25/01-2009
第55回 野外コンサートでのサラウンド制作 その実際と注意点 26/10-2008 
第54回 実践Foley録音とそのアプローチ 14/09ー2008 
第53回 世界自然遺産にみるドキュメンタリー サラウンドコラージュ 20/07-2008
第52回 SA-CDプラネットアースのサラウンド制作とクラシックのアプローチ 08/06-2008
第51回 サラウンド塾 倍音豊かなフィールド サラウンド 19/04-2008

第50回 持ち出しサラウンド寺子屋塾 CMのサラウンド制作 1991からのアプローチ 27/01-2008
第49回 持ち出しサラウンド寺子屋塾 実践サラウンド マイキング 21/10-2007
第48回 持ち出しサラウンド寺子屋塾 大型映像とサラウンド制作の現状 24/09-2007
第47回 持ち出しサラウンド寺子屋塾 実践サラウンドリバーブ 27/07-2007 
第46回 サラウンド塾 神々の響きを求めて BS-iドキュメンタリー制作から 01/07-2007 
第45回 サラウンド塾 高品質配信ビジネスとサラウンドJJazz.Netの取り組みから 24/06-2007
第44回 サララウンド塾 2007年JPPA AWARD学生部門授賞作品から 10/06-2007 
第43回 持ち出しサラウンド塾 AV評論からみたサラウンド デザインとは? 02/05-2007
第42回 持ち出しサラウンド塾 YAMAHAサラウンドパッケージの使いこなし 29/04-007
第41回 サラウンド塾 サラウンドロケDVD 制作「SUPER ROLING iN the Sky」01/04-2007

第40回 スペシャル寺子屋セッション ジョージ・マッセンバーグを迎えて 27/02-2007
第39回 持ち出しサラウンド塾 wowowのサラウンド制作 21/01-2007
第38回 持ち出しサラウンド塾 アニメーション5.1制作とTHXダビングステージ 19/11-2006 
第37回 持ち出しサラウンド塾 ゲームのサラウンドデザイン 29/10-2006
第36回 サラウンド塾 角田健一 Big Band Stage DVD-A制作について 15/10/2006
第35回 持ち出しサラウンド塾 冨田勲の語る武満徹の音世界 09/07/2006
第34回 サラウンド塾 オーディオ ドラマのサラウンド制作 25/06/2006 
第33回 持ち出しサラウンド塾 石井コレクションを聴こうat 音響ハウス 21/05/06 
第32回 サラウンド塾 カムチャッカ世界自然遺産 サラウンド ロケ 14/05/06 
第31回 特別サラウンド塾 カナダMcGill 大学の音楽教育 30/04/06 

第30回 サラウンド塾 新シルクロード サラウンド制作 26/02/06
第29回 特別サラウンド塾 エリオット・シャイナーを迎えて 07/12/05 
第28回 持ち出しサラウンド塾 at SONA 視聴室 23/11/05 
第27回 持ち出しサラウンド塾 at パイオニアスタジオ 28/10/05
特別レポート 第119回AES N.Yコンベンション 参加者の熱いレポート 30/10/05 
第26回 サラウンド塾 NTV/TV-ASAHI/MBS各社のクラシック サラウンドマイキング聞き比べ 02/10/05
第25回 サラウンド塾 George Massenburgの世界とUNAMAS JAZZ LIVEを聴く 31/07/05 
第24回 持ち出しサラウンド塾 FM-YOKOHAMAサラウンド制作 03/07/05
第23回 サラウンド塾 愛地球博記念 冨田勲 源氏物語幻想コンサート15/05/05
第22回 サラウンド塾 47回グラミー賞5.1ch制作 17/04/05
第21回 サラウンド塾 塾生オリジナル聞きまくり02/20/05

寺子屋スペシャルプロジェクト ポップスサラウンド制作ガイドラインNARAS5.1オリジナル
寺子屋スペシャルプロジェクト ポップスサラウンド制作ガイドラインNARAS5.1日本語版完成

第20回 サラウンド塾 市川パイオニアDVD-Aプロデューサ 01/30/05
第19回 持ち出しサラウンド塾 仁平・川島・野川T-FM IRIS 12/5/2004
第18回 持ち出しサラウンド塾 SEIGEN/RIE 11-3-2004 マランツショールーム(PDF) 
第17回 サラウンド塾 木村佳代子 9/26/2004 作成中
第16回 持ち出しサラウンド塾 鈴木弘明 JVC 7/2004 DVD-AUDIO 中野SONA
第15回 持ち出しサラウンド塾 井上哲 TV朝日 6/2004 TV朝日六本木 作成中
第14回 持ち出しサラウンド塾 深田晃 NHK  5/30/2004 マランツ恵比寿ショールーム 作成中

第13回 冨田勲 サウンドクラウドの歩み 4/25/2004 
第12回 小野寺茂樹 NHK 4/11/2004フィールド録音
第11回 山田道雄 NHK 3/21/2004 POPS 5.1CH

第10回 高田英男 JVC 2/1/2004 作成中
第9回 持ち出しサラウンド塾 染谷和孝 SONY PCL 2004/2/15 作成中
第8回 持ち出しサラウンド塾 オノ・セイゲン 2004/1/11 サイデラ・パラディソ 作成中

第7回 Mick沢口 NHK サラウンド87年からの取り組み 2003/12/30
第6回 染谷和孝 Sony PCL Inc. 2003/11/30 作成中

第5回 中村寛 (株)WOWOW 技術局技術計画部 2003/xx/xx 作成中


第4回 糸林薫 NHK ラジオドラマサラウンド11/2/2003
第3回 中村栄治 RedAJ Sound,Inc. 2003/9/28  作成中
第2回 オノ・セイゲン サイデラ・パラディソ 2003/8/17 作成中
第1回 深田晃 NHK 7/13/2003 作成中


「実践5.1ch サラウンド番組制作」 Index
「サラウンド入門」は実践的な解説書です

January 5, 2000

サラウンド制作情報 Index


UNAMASレーベル「UNAHQ 2011 A.Piazzolla by Strings and Oboe」 没入感サラウンド9.1CH制作

Bruce Swedien「A lifetime in the Recording Studio」ブルース・スウェディンの録音哲学

ピアノソロ 9CH制作 at 大賀ホール

UNAMASレーベル 9.1CH サラウンド制作

トーンキュンストラー管弦楽団のハイレゾリューション・サラウンドレコーディングについて

ベルリン•イエスキリスト教会でのオーケストラ•サラウンドレコーディングについて

教会音楽のサラウンド制作 〜 ハインリッヒ・シュッツ作品集

古くて新しいダミーヘッドによるサラウンド制作の解説

ベルリンでのオーケストラ・サラウンドレコーディングについて

フィールド・サラウンド録音における音源別最適マイキングの究明

フィールド サラウンド録音と音楽の融合「サラウンド スケープ」の制作

インド初のサラウンド制作セミナー at ムンバイを担当して 2010-12-8

ラウドネスモニタリングとはなにか? InterBEE音響フォーラムから 2010-11-18

AMBISONICの原理と制作の実際 1992年 Ambisonic 資料より 2011-01-06

最後の弾丸:HD-TVサラウンド ドラマ 2010-12-31

2010年5月1日サラウンドの日 名古屋体感イベント報告 2010-05-13

山陰放送 亀川式オムニ8を使用した教会録音 2010-03-11

2009年サラウンドワークショップ芸大編 2009-12-19

作曲家・音楽制作者のためのサラウンド入門 2009-12-17

2008年サラウンド寺子屋塾全国行脚1年間を終えて 2009-04-20

第14回AES TOKYO CONVENTION にて

MICK SAWAGUCHI JAPAN AWARD受賞のお知らせ 2009-07

第2回名古屋サラウンド勉強会報告 2008-02

2008年グラミー賞 サラウンド部門の結果

第6回関西サラウンド勉強会報告 2008-01-11

冨田勲さん第1回エレクトロニックアーツ受賞記念講演会 at 浜松 レポート 2007-10-25

名古屋サラウンド勉強会 レポート 2007-09-12

北京オリンピック 中国CCTV サラウンドセミナー 2007-08-20

ミュージシャンの聴覚ダメージ調査報告 2007-07-06

冨田勲さん第1回浜松エレクトニックアーツ賞受賞と
高木創さんJPPA2007GOLD賞受賞ニュース 2007-05-25


第2回中国サラウンドセミナー済南市 レポート

生音Folyの開拓者Jack Folyとは? 2005-09

一歩前進 アメリカPOPSサラウンドMIX~TEC AWARDノミネーション作品から 2005-08

公開中スターウオーズEP-3のサウンドデザイン 2005-07

知って為になるアメリカ映画業界 用語集 2005-06

SANKEN CUW-180サラウンドマイク アレイ評価レポート 2005-05

オリバーストーン監督「アレキサンダー」のサウンドデザイン 2005-04

POPSとクラシック音楽サラウンドのアプローチを聞く 2005-03(準備中)

BBC プロムスコンサートHD+5.1サラウンド 2004

中国サラウンドセミナー SANKENマイク Mr.KOBAYASHI 2004-12

第117回 AESコンベンション キーノートスピーチよりA&M社長 R.Fair

InterBEE国際シンポジューム サラウンドセミナー 2004-11

中国のサラウンド事情第1回FARASフォーラム リポート2004-10

サラウンド評論家 小原氏とのサラウンド談義 1999-08

SEIGEN ONOとのサラウンド談義 2003-10

Mick/Akira FELLOWSHIP授賞対談 2003-08

井上 哲氏「サラウンド制作への熱き思いを語る」2003-10

2002年 InterBEE国際シンポジュームサラウンド講演より

5.1CHサラウンド モニタースピーカの校正手順 By B・オースキー

2002FIFAサーカー スポーツサラウンド制作 2002-07

BBCプロムナードコンサートサラウンド制作 2001-01

蘇ったQUEENの名作「A MIGHT AT THE OPERA」2002-02

1987年 初サラウンド ドラマ 制作記 復刻版 2002-04

アメリカJAZZ KUVO-FMのDSD-サラウンド導入 2002-05

サラウンド サウンドはどこまで来たか? 2002-12

駆け足で見るサラウンドの歴史 2000-10

Malcolm Luker映画のスコアリングについて 2001-07

クラシック サラウンドマイキング 2000-09

ゲームのサラウンド音声制作 2002-09

30年ぶりのピンクフロイド「Dark side of the Moon」5.1CH SACD 2003-05

サラウンド マイキングSWISS SOUND ARTの試み 2000-08

2002冬季オリンピック サラウンドNBC 2002-04

アメリカHBO Stomp Out Surround! 2001-04

「実践5.1ch サラウンド番組制作」 Index
「サラウンド入門」は実践的な解説書です